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野中ともよさんといえば、NHKの番組でスポーツを伝えた最初の女性ジャーナリスト。昔は皆さん信じられないでしょうけれど、スポーツジャーナリズムは男の世界。女子アナがスポーツを伝えるなんてあり得なかったんです。そんな時代、社会問題、政治経済問題、国際問題にも大きな影響を与えるスポーツを伝えることの重要さをしっかりと認識し、新しい形のスポーツニュースをつくり出した人でした。その後様々なジャンルの問題について探求し、政府の各種審議委員会の委員や企業の社外取締役を歴任した後、新潟県中越地震の影響その他で経営の再構築が伝えられる三洋電機の会長に就任。世間を驚かせました。
ハセベ 日頃からいろいろとお世話になっております。改めてお聞きしたいのですが、どうして、あえて経営者として難しい問題に立ち向かおうと決断したのですか?
野中 それを説明するにはいろいろとさかのぼらなくてはいけないのだけれど、私は昭和29年生まれ。もの心ついた頃には氷で冷やす冷蔵庫を使ってました、冷房なんかないし、私の家は周辺で最初にテレビが入ったので、みんなが見に来ていました。台所にある醤油の瓶の口の周りは黴びるものだったし、大福は翌日には堅くなって焼いて食べるものでした。それが高度経済成長が進んで、いろいろな薬物を使うなどして、置いておいても腐らないサンドウィッチや形の整ったキュウリといったものばかりが商品として並ぶようになりました。
ハセベ 消費者もそうしたものを求めるようになっていったわけですね。
野中 右肩上がりで数字が増えていくことだけを求めていた。私は環境のことには早くから興味を持ち調べていましたが、ジャーナリズムの一分一秒を争う世界にいて本質的なところまでは理解できていなかった。きっかけになったのは子供を授かったことです。ソウルオリンピックの取材の翌年結婚して娘を産みました。子供を育てて腐らないパンの本当の恐ろしさを知りました。
ハセベ うちも昨年娘ができて、やっぱり実際に自分の子供を育てていると気がつくことがいろいろありますよね。
野中 あらゆる人間は女性から生まれてくる。男性が中心になっている社会でもそこのところは女性が担う。そのメカニズムを実感しました。そして男性は決断力には確かに優れている、でも直線的である意味単純です。福祉か経済性かといえば経済性だけ。でも生理がある子供を産む女性はそうはいかない。バランスが取れないと生きていけない。そのためには多様な価値観が必要なんです。数字だけじゃない。
ハセベ まだまだ区政の現場などは男性が中心なんですが、でもだいぶ変わってきましたね。
野中 今まで日本は片肺飛行で来てしまった。男女両方の価値観で、しっかりと話し合ってものごとを決めていく。そうやって命のことをガイアのことを考えていかなくてはならないと思うんですよね。
ハセベ 血が流れていないのであまり目立っていなくて気がついてない人が多いですけれど、今は大変な革命が起きている時代だと思ってるんです。価値観ががらりと変わってきている。効率性ばかりを追求していく時代は終わった気がします。
野中 そうなんです。もう一回すべての資源を元通りにするなんて無理なんです。逆にそうでなければ、これから生き残っていけない。「ガイア理論」のジェイムズ・ラブロックさんにお会いしたら本当に憂えていらっしゃいました。数字を追求するのではなく、人の幸せを追求すること。私は社外取締役を3年やって、三洋電機の技術力に惚れ込んだんです。温暖化を食い止めるためにできることを、この会社でなら実現できるんじゃないか。そのために私が力になれるのなら。ただ地震の被害を受けたり世界的な財務基準の変化についていけなかったり、大変な状況になってしまった。そんな時に会長にという話があって、決意したんです。
ハセベ 正直、責任も重いし、会社の状況もあるし難しい決断だと思うんですけれど。
野中 私は、人はそれぞれやらなくてはいけないミッションというものを持っていると思ってるんですよ。父からの教えでもあります。
ハセベ それで地球に優しい企業へと。
野中 いえいえその言い方は人間の傲慢ですよ。地球は人間のことなどシャラクサイくらいにしか思っていません。地球に喜んでいただくために何とか技術を開発していきたい。命が喜ぶことをすること。それがこれからの価値観だと思うんです。財務は厳しい、でも技術力がある。命が喜ぶことをやっていける。シンク・ガイアを言ったときにマスコミの方は皆さんが儲けてから言いなさいよ、と呆れていましたが、逆なんですよ。水と空気とエネルギーを製品作りの根幹としています。すごくはっきりしていて、それは企業としても強いんですよ。そこのところを理解してもらいたいんです。
ハセベ そんな会社が成功する社会をこれからつくっていかなくてはいけませんね。それが、地球に喜んでもらえる人間のミッションだなあ。
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