ハセベケンは原宿生まれの原宿育ち。神宮前でやんちゃな子供時代をすごし、住んでいるのも当然渋谷区。活動拠点も今でも原宿駅前に置いて渋谷、東京、日本、世界を視野に動き回っている。ファッション、流行の発信地として情報が集まる場所、その意味でのアドバンテージはあるけれど、彼にとって基本的には見知った人々がつくる地元のコミュニティ。一番自然な自分でいられる場所である。そんな原宿の居心地のよさのなかから、その気持ちよさを守るため、新しいものづくりの胎動をサポートするため、green
birdの活動は生まれ育ってきた。
そして昨年、ハセベが出会った杉山文野さんは新宿生まれの新宿育ち。それも、歌舞伎町というディープな街の誕生に関わる家の生まれというのだから、筋が通っている。そして文野さんは戸籍上は女性として
生まれたが、心は男性。性同一性障害とつき合いながら生きてきた。悩んだ末にカミングアウトした彼はさまざまな人と出会ってきたが縁あって自分の抱えているメッセージを5月末には書籍にして発売する予定だ。歌舞伎町で生きる人たち、裏も表も辛さも苦しさも、笑いも涙もそこではライブ、生々しく存在している。そんなことを全身で感じることのできる感性を全開にして、文野さんは生きている。
杉山
住んでいるのは大久保のほうなんですけど、とんかつ店をやっている父のお店がありますし歌舞伎町はやはり故郷というか自分の街ですね。やたら迫力ある街ですが。
ハセベ
表参道も人がパニックになるほどたくさん来る盛り場でしょう。よくそんなところに住めますね、っていわれることもあるんだけど、たまに海外に行ったりしてしばらく家を空けてから帰ってくると、あの表参道の雑踏にすごくほっとすることがあるんだよね。
杉山
そういう意味では、歌舞伎町も自分にとって普通の生活の場なんですよね。
ハセベ
文野の場合は、歌舞伎町という街をひいおじいちゃんがある意味つくったわけでしょう。
杉山
いや、厳密には直系のひいおじいちゃんじゃないんですけど、親戚筋ですね。歌舞伎の劇場を持って来ようというアイデアを戦後に提唱した人なんです。それはGHQの条例なんかでダメになってしまいましたけど、歌舞伎町という名前は残りました。映画館や劇場がある、活気のある街になったもともとのアイデアを出した人ということですね。自分自身は、歌舞伎町の本当にディープな部分はけっこう知らなかったりもするんですけれど。やっぱり住民が今ではすごく少ないし、仕事で来ているという人たちには帰属意識はあんまりなかったりする。歌舞伎町ルネッサンスみたいな活動や、都や国がいろいろと考えて小泉首相や石原都知事が視察に来たりすることで注目は浴びてますし、街を良くしようという運動は少しずつ盛んになっていますけどね。でも本来、歌舞伎町はさまざまな人、価値観が混ざり合った懐の深い街だと思うんです。だから面白い。
ハセベ
街は生き物だし、何か決まりで規制したり、良くないものを追放したりすることでは結局変わらないんだよね。タバコのポイ捨てを条例で禁止したり罰金を取ったりということよりは、街で暮らす人、遊びに来てくれる人の心に訴えないと仕方がない。
杉山
そうなんですよ。自分はとにかく汚れているのがいやで、高校生のときに掃除する!って言ったら父が、じゃあ時給出す、って言ってくれて、一人で掃除してたことあるんですよ。でもつまらなくて。
ハセベ
一人でやるのは辛いよね。
杉山
そうなんですよ。だから、green birdのことを聞いて、はじめて表参道に掃除に来たときは、なるほど楽しくできるんだな、って思いましたね。最近は歌舞伎町でもいろいろな人と出会えるようになって、面白くなってきていますよ。たとえばホストの手塚眞輝さんが中心になってつくっている『夜鳥の界』さんというボランティア団体があるんです。街の掃除なんかをやっているんですが、彼らのホームページをたまたま見つけて、掲示板に書き込んで知り合っていったんですけど、今も一緒に掃除をしたり遊んだしていていいつき合いになってますね。だんだん歌舞伎町も変わっていくんじゃないかなって期待しているんですよ。押し付けられて変わるんじゃなくてね。
ハセベ
街はそこで働いている人たちにとっても、自分たちのものだと思うんですよ。表参道に出店しているお店にはそんな意識が高い人が多くなってきてますね。
杉山
表参道は自分たちから見るとうらやましいですよね。イメージがすごくいいじゃないですか。歌舞伎町の場合、やっぱりホストの人とか、水商売の人とか、どうしても自分は働きに来ているだけのよそ者だという意識が強いんですよ。歌舞伎町は思い切り夜の街で、いろいろな事件なども起きたこともあってかなり極端ですよね。その悪評を変えていく、というのはかなりやりがいのあることだと思うんですよ。その意味でとても楽しみにしているんです。
自分の街を大事にすることは、自分自身を大事にすることだ。極端な故郷を、極端なままに愛して、良くしていく努力。文野さんの今後から、目が離せない。
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