volume 88 (『ソトコト』 2011年2月号掲載)
今回の対談相手は湯本優さん。現役のプロアスリートでありながら、医師免許を持ち、スポーツを通じた健康的なライフスタイルの普及に尽力。また2010年3月からは『JustGiving Japan』の代表にも就任。さて、その素顔とは一体!?

  「JustGiving」とは、2001年にイギリスで始まったインターネット型のチャリティ・プラットフォーム。現在までに全世界で約1200万人が利用、約980億円の寄付という世界最大級の規模になっている。
 その特徴は、誰でもチャリティプロジェクトを立ち上げられること。希望者はチャレンジャーとしてサイトに登録し、自分がチャレンジしたい目標と支援先を設定する。チャレンジは何でもOK! 自分のチャレンジに対して寄付金が集まったら、自分が支援したいNPOなど(基本的にはJustGivingに登録された支援先)に寄付される。もちろん、誰かのチャレンジに寄付することも可能だ。
 そして、2010年3月からは日本でも『JustGiving Japan』としてサービスを開始。その代表に就任したのが、現役のプロアスリートであり、医師である湯本優さん。今回は、スポーツやチャリティといった想いについて伺いました。

ハセベ
医師の免許も持ちながら、プロスポーツ選手として活躍したり、春からはJustGiving Japanの代表になったりといろいろと手がけていますが、どうしてこういうことを?
湯本
そもそも自分の人生にとってスポーツが原点なんです。15歳でマウンテンバイクを始め、海外へナショナルチームのメンバーとして行くなど10代からプロ並みに活動していました。では、なぜ医学部に進学したかというと、高校2年生のときにドイツの世界選手権へ行ったのがきっかけ。欧米のチームでは当時からすでにスポーツ医学が進み、スポーツドクターやトレーナー、メンタルコーチなどがいて、チームで選手をサポートしていた。それを見て、将来的にスポーツに関わる仕事がしたかったので、医師になったほうがやりたいことができるのではと思って医学部を受験したんです。医学部に進学した後も最初4年間は学業と両立してスポーツをしていました。その後一旦休学して、4年間ほどスポーツを中心に活動し、海外の視察もしました。そしてオリンピックを目標に戦っていましたが最終選考で敗退。その後復学して日本に戻ったとき、日本の医療に矛盾を感じたんです。
 日本の場合は、国民皆保険の弊害もあるのですが、病気や怪我をしてしまった後に治療をするということが医療の中心になってしまっています。ですが、選手の立場からすると、怪我をしたら終わりだし、一般的な医療においても、病気になったら防げないことも多い。しかも、今の日本人の死亡原因の7割は生活習慣病。つまり、逆に言うと、少し食生活に気をつけたり運動をすれば防げることが多い。だったら、スポーツを通じて体を動かす喜びや、正しく体を動かして健康管理をすることを伝えたいと思い、メディカル&スタイルを立ち上げました。そうすれば多くの人を病気や怪我から救えるし、自分の好きなスポーツを通じて社会に恩返しができると思ったんです。
ハセベ
すごく計画的に人生を考えていますね。その中でどうやってJustGivingに結びついたのですか?
湯本
欧米のスポーツ大会の多くは、「Run for 〜」というように、スポーツとチャリティが密接に繋がっている。ですが、日本ではまだそういう大会は少ない。2009年末、チャリティ先進国であるロンドンへ視察に行ったのですが、ロンドンマラソンの参加者の約9割が、チャリティを掲げて走っていて、1回の開催で約38億円も寄付が集まるということを知って衝撃を受けました。そしてJustGivingの存在を知り、これこそ究極のスポーツを通じたチャリティだと思ったんです。
ハセベ
確かに、まだ日本にチャリティ文化はほとんど根づいていない。でも、リーマン・ショックのおかげで、日本中の価値観が変わってきましたよね。お金をかけない楽しみ方とか、健康的な生活とか、豊かなライフスタイルというものに重きをおくようになった人が増えていると思う。だから、これからJustGivingはどんどん使ってもらえるんじゃないかな。
ハセベ
JustGivingのチャレンジは何でもいいんですか?
湯本
JustGivingの全世界の事例の7割がスポーツ。スポーツは勝敗が明確なので、目標設定がしやすいんです。でも、基本的には何でもかまいません。「マラソン大会を完走する」「禁煙」「ビールを毎日飲み続けます」など人によって様々。もともとは私生活のなかで自己満足のためにしていたことが、JustGivingを通じて、「何々のために走る」などと宣言することで、仲間が増えたり、多くの注目が集まり、自分のモチベーションが上がる。しかも、自分が頑張った分、たくさん寄付金が集まり、結果的に寄付先も喜んでくれる。同じことをするのにも付加価値がついて、それによって多くの人が幸せになるというのがいいなと思います。

幸せな人を増やす。

ハセベ
例えば週1回ゴミ拾いをするというのは……。
湯本
とてもいいと思いますよ。ゴミ拾いで街もきれいになるし、体も動かすことで健康になりますし。なにより、年齢を問わず多くの人が参加できるというのが素晴らしいことだと思います。
ハセベ
やはり週1回でも体に好影響があるんですか?
湯本
もちろんです。日本は欧米に比べてフィットネス人口が相当少ない。そして、日本人は運動というと、苦しいもの、汗をかかなくちゃいけない、などというイメージが強い。でも、ストレッチ、散歩、ゴミ拾い……なんでもいいので少しでも体を動かして続けることが大事なんです。
ハセベ
素敵ですね! 自分も健康になるし社会にも還元できる。ぜひ、ゴミ拾いダイエットとして広めたい(笑)。
湯本
楽しみながら社会貢献できることが大事。少しずつスポーツを通じたチャリティを広げていきたいです!
●ゆもと・ゆう
メディカル&スタイル代表。JustGiving Japan代表。プロアスリートであり、医師免許を持つ。マウンテンバイクやXTERRAの日本代表、日本チャンピオンを経て、現在はアスリート、ドクターの両面の経験を活かし、スポーツを通じた健康的なライフスタイルの普及に尽力。各種健康プログラム監修・コンサルティングやスポーツ・健康をテーマにした講演などを行う。2010年3月にJust Giving Japan代表理事に就任。http://www.justgiving.jp/http://www.medicalstyle.jp/
●ハセベ ケン
渋谷区議会議員、NPO法人green bird代表。
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属。
ハセベケン事務所ホームページ