volume 85 (『ソトコト』 2010年11月号掲載)
今回の対談のお相手は、電通内に「汐留イノベーションスタジオ」という クリエイティブユニットを創設した武藤新二さん。
さて、広告業界から発信する新しい社会貢献のあり方とは!?

 今年7月1日、電通と慶應義塾大学SFCが、クリエイティブユニット「汐留イノベーションスタジオ」(以下SIS)を創設した。これは、共同研究を通じて「情報流通プラットフォーム」「コンテンツの価値創造」「未来視点のソーシャル活動支援」をテーマに、社会に役立つ新しい商品やサービスの開発や実証実験や発信を行うプロジェクトだ。そして、その第1弾として「ぷちドネ」を開発。これは、携帯電話のデコメール(以下デコメ)のキャラクターをダウンロードすると5つのNPOのいずれかに1円が寄付されるという新しいドネーションの仕組みのこと。そして5つのNPOには、もちろんグリーンバードも参加! そこで今回は、SISのディレクターである武藤さんに、活動についてお話を伺いました。

ハセベ
もともと武藤さんとは約3年前に、縁あってご紹介いただきお会いしたんですよね。それから今回の「ぷちドネ」に繋がったわけですが。僕がSISの活動がいいなあと思ったのが、社会貢献に取り組む人たちって、会社を辞めて活動することが多い。でも、武藤さんは会社に勤めながら社内ベンチャーとしてSISを立ち上げ、しかも慶應義塾大学SFCと産学連携しながらソーシャルプロデュースを行っている。なぜこういうことを始めようと思ったのですか?
武藤
2008年に社内に新規事業を開拓する「インキュベーション室」という部署が設立され、その後、所属になったんです。やはり、社会が大きく変わる中で、会社が社会的価値は何かを問う時期にきたんですね。で、広告会社というのは、さまざまな企画力やクリエイティブ力を磨く機会に恵まれている。でもそのノウハウや知恵は、広告だけに発揮するのはもったいない。他の分野にも使えば、僕たちのアイデアはもっと社会に役立つのではと考えたんです。しかも、将来的にはその経験がまた自社にフィードバックされ、事業が拡大されていく……。そこで「未来に向かって仕掛ける」をスローガンにして、社内から12名のメンバーを集めてSISを立ち上げました。
ハセベ
そんな中、「ぷちドネ」の寄付先の一つとしてグリーンバードに声をかけてくれたのは嬉しかったです。
武藤
以前ハセベさんもおっしゃっていましたが、社会貢献をしたいと思っても躊躇している人は世の中に多い。「ぷちドネ」なら、デコメで簡単に寄付ができる。しかも行動に移したいと思ったときに、グリーンバードであれば、実際の活動に参加できますしね。それにグリーンバードは新たにボランティアをしたいと考える人に、広く門戸を開いていると思ったので。
ハセベ
ありがたいお言葉ですね! 僕も以前は広告業界にいたため、武藤さんとは暗黙知で通じることが多く、今回はとてもやりやすかったです。「ぷちドネ」を開始してみて反応はいかがですか? すぐに結果は出ないものだと思うのですが。
武藤
そうですね。長く続けることが一番大事だと思っています。「ぷちドネ」には、「世界をカエル虫くん!」というキャラクターが登場するのですが、このキャラクターをデコメで使ってもらうと、「かわいい!」や「楽しい!」を通じて寄付ができる。エンターテインメント性を持たせた寄付で世界を「カエル」ことができればと思って名付けたんです。もっとキャラクターが社会に役立つ仕組みやサービスに使われていければ、世の中を楽しく変えていくことができるはず。たくさんの人に知ってもらうためにも、今後はデコメだけでなく、いろいろな切り口で広げていきたいと思っています。

じわじわと空気づくりをする。

ハセベ
お話を聞いていると、海外で機能しているNPOを支援するNPOとSISは、近い活動をしているように思えます。社会をよりよくするために、時間をかけてじわじわと空気づくりをしているような。
武藤
広告会社というのはあるキャンペーンが一定期間あり、それに向かって準備して終われば次、という仕事のスタイルをとることが多い。一方でSISの活動は継続的にやることを基本スタイルにしたい。社内メンバーはみんな兼業でSISのプロジェクトに参加しているので、大変な時もありますが楽しみながら続けていきたいです。
ハセベ
わかります。僕も会社を辞めたとき大変でしたね。締め切りがないし、自分で自分を追い込んでいくしかないから。でも、忙しい業界にいながら、自発的にやっているのは本当にすごいと思います。現在「ぷちドネ」のほかにどんなプロジェクトを?
武藤
ほかには、自分で撮影した写真を使って、簡単に4コマ動画の「ジブンCM」がつくれる「ClipCM」というiPhoneのアプリを開発しました。10歳を迎える子供たちが将来の夢を語る「1/2成人式」という小学校の行事で、「ClipCM」を実験的に使っていただきました。また、9月からは、「PaPaCo Design Project」も開始しました。これは、父親と子どもが遊びを通じて創造力を育てていくためにさまざまなコミュニケーションツールを提供するというものです。その第一弾として、「アースガラガラ」をつくりました。これは、自然の中で聴くことができるあらゆる音を「ガラガラ」に見立てて、iPhoneを振ることで楽しむ無料のアプリです。自由に音を組み合わせることもできるので、親子で音当てクイズや物語づくりなどができます。そしてデジタルな自然の音を聞いたことをきっかけに、本物の音に興味を持った子どもが、親と一緒に海や山に出かけていく。そんなアクションにつながったらと思っています。僕らの強みはコミュニケーション力なので、それを活かしたうえで、社会に役立つ楽しいサービスをこれからも発信していきたいと考えています。
ハセベ
おもしろいですね。武藤さんのように新しい感性をもった方が、僕らグリーンバードのような活動に関わってくださって、とっても嬉しいです。武藤さんはどんどん出世されると思うので、これからもしっかりとついていきます(笑)。
●むとう・しんじ
電通 汐留イノベーションスタジオ(SIS)ディレクター。慶應義塾大学SFC研究所員(訪問)。1992年に広告会社の電通に入社。クリエイティブディレクション、ブランド開発設計、ソーシャルデザイン、メディアコンテンツ企画制作など、仕事の領域は多岐にわたる。2009年7月よりインキュベーション室所属。http://www.sis-web.jp/
●ハセベ ケン
渋谷区議会議員、NPO法人green bird代表。
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属。
ハセベケン事務所ホームページ