volume 76 (『ソトコト』 2010年2月号掲載)
今回の対談のお相手は、空間クリエイティブカンパニー
『JTQ』の代表・谷川じゅんじさん。
様々な空間の総合プロデュースを行い、2009年に復活した表参道の
イルミネーションもアドバイザーとして手がけました。
今回は、表参道への思いを中心に、様々なお話をお伺いしました!

 11年ぶりに表参道のイルミネーションが復活(2009年12月1日~2010年1月10日まで)した。1991年にはじまったイルミネーションは、表参道の風物詩として親しまれていたが、電球をつけるケヤキへ負荷がかかることや、ゴミなどが問題となり、98年に中止。しかし復活の声も多く、今回は消費電力が少ないLEDを使うなど様々な対策をして、ついに念願の復活! そこで、アドバイザーとして復活に貢献した谷川じゅんじさんに、表参道に対する想いや空間プロデュースの醍醐味を語ってもらいました。

ハセベ
もともと、どういうきっかけで表参道に関わりだしたのですか?
谷川
表参道ヒルズの建設が始まったときです。館全体の永続的な集客性の仕組みを考えてほしいと言われ、表参道ヒルズを改良しようと、関わりはじめました。その後2008年に、表参道で「エコ アベニュー ムーブメント」のイベントを行う際にコンペに呼んでもらって。その結果、40日以上にわたってキャンドルイベントを行いました。このイベントは、「エコアベニュー」というテーマの下、08年が明治神宮の記念年であり、そこに表参道の商店街をどう繋げるかを考えました。そこで、一人ひとりの思いを顕在化させるため、人の手で明かりを灯しては、と提案したんです。
ハセベ
キャンドルイベント、すごく好きでした。キャンドルで地域を繋ぐって、シンプルで素敵ですよね。
谷川
最初はダメもとで提案したんです(笑)。だって、四十数日間、延べ7万回以上キャンドルに着火したんですよ。自分の店の前のキャンドルは自分で灯す原則でしたが、それでもかなり大変。でもやり遂げたのを見て、表参道の根底に流れる、商店街を盛り上げる気持ちと、明治神宮への思いを感じました。だから、皆で力を合わせればもっとすごいことができるのではと考えたんです。
ハセベ
それが今回のイルミネーションに繋がったと。実は僕、こんなに早く復活するとは思ってませんでした。
谷川
やっぱり、キャンドルイベントの達成感がたくさんの人の中に残っていて、もっと大きなものをやろう、という流れになったのだと思います。しかも、こんなご時勢にもかかわらず、スポンサーや助成金がついたのは奇跡。暗い世を少しでも明るくしようと思いが働いたんでしょう。

大切なのは「間」

ハセベ
商店街の人たちも「ここから元気を発信していこう!」と張り切っていますしね。
谷川
そうなんですよね。今回の企画は、実行委員会というカタチをつくって議論を重ね、商店街全体でつくり上げたことで、うまくいったんだと思います。
ハセベ
確実に、いつもより商店街全体が明るくなってますよ。イルミネーションに乗じてもっと何かやろう、と活気づいているんだと思います。今回のポイントは?
谷川
表参道らしさです。表参道といえば、1キロの直線と立ち並ぶケヤキ。今回、ケヤキに負荷を与えないことが条件だったので、ケヤキを1本ずつ調査しました。結果、電球を付けられる木もあれば、付けられない木もあった。だったら、無理な木は外そうと。もちろん全体から見たらデザインは崩れる。でも、ケヤキを守るために電球を外すことに意味があるし、「エコ アベニュー」を掲げる表参道が考えるイルミネーションのあり方だと思うんです。
ハセベ
 しかも、外したケヤキも、全体から見ると気になりませんし!
谷川
また、視点を下げたことも特徴です。子供やお年寄りが楽しめるよう、電球を下に付けました。「表参道まちかど庭園」というものもつくり、皆の願い事を書いてもらい、最後は明治神宮に奉納する予定です。皆の思いを一つに集めるというのが、08年から続く共通テーマですね。
ハセベ
そういう思いが伝わるから、清掃を含めボランティアの人もたくさん集まってくれる。嬉しいですね。
ハセベ
ところで、谷川さんが今の職業についたきっかけは?
谷川
僕は早くに父親を亡くしたため、大学を中退してディズニーランドで働いていたんです。そこで、「人が喜ぶビジネス」を経験し、感銘を受けたんです。同時に、人が喜ぶためには「場」が必要だと思いました。例えば祭りやコンサートのように、多くの人数で喜ぶと喜びは倍増します。そんな場づくりを学びたいと思い、施工屋に転職しました。その後、02年にJTQを立ち上げたんです。やはり人間は社会性の生き物なので、社会の中でサスティナブルに生きる原動力を、僕は「喜び」に見出したいと思ったんです。だから、来た人が喜びを感じ、それをまた体験したいと思える空間を提供できるよう心掛けています。なので、どの空間も「また来たい」と思えるような、”付け入る隙”を用意しています。
ハセベ
付け入る隙ですか。面白い!
谷川
言い換えると、それは「間」。お笑いの間もそうだし、人と人との距離もそう。要は自分が入れる場所のことです。特に日本人は間に敏感。なので、必要以上に入り込まず「いらっしゃい」という余白を見せることが空間には必要です。
ハセベ
すごい技ですね! 来た人が手を伸ばせば距離が縮まるような空間づくり……それこそ「参加する」ということなんですね。
谷川
そうです。参加するから楽しめるし、興味を持てる。隙があるからこそ「もっとこうしたら?」と意見も出る。そういう意見を言い合っても壊れない頑丈な背骨があれば、その場は永続的に続きます。だから、今回のイルミネーションも含め、多くの人が参加してくれることが今後に繋がると思っています。
ハセベ
2010年以降もぜひ続けたいですね!
●たにがわ・じゅんじ
スペースコンポーザー・JTQ代表取締役。1965年生まれ。“空間をメディアにしたメッセージ伝達”をテーマに、空間インスタレーション・エキシビジョン・展覧会・商業施設など、デザインと空間演出の両面から多角的視点で総合プロデュースを行う。パリルーブル宮・装飾美術館における「感性kansei -Japan DesignExhibition-」総合空間ディレクションをはじめ、テーマ性の高いメッセージ空間作品を多数手がけている。http://www.jtq.jp/
●ハセベ ケン
渋谷区議会議員、NPO法人green bird代表。
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属。
ハセベケン事務所ホームページ