volume 71 (『ソトコト』 2009年9月号掲載)
今回の対談のお相手は、全国の商店街の活性化事業を手がける
『商店街ネットワーク』代表取締役社長の木下斉さん。
木下さんが商店街の活動に取り組むようになった経緯から、
今後の商店街の可能性など、様々なお話を語っていただきました。

 高校時代から早稲田商店街の活動に関わり、日本初の全国的な商店街の共同出資会社『商店街ネットワーク』を設立し、なんと高校生で社長に就任した木下さん。その後、各地の商店街の活性化事業で成功を収め、地域経済の発展に幅広く貢献している。グリーンバードの活動を通じて各地の商店街との付き合いを深めるハセベケンにとっても、ためになるお話ばかり! さっそくいろいろと教えていただきました。

ハセベ
木下くんといえば、高校3年生のときに「IT革命」という言葉で2000年の流行語大賞を受賞したよね。あれは最初に言い出したの?
木下
いや、僕は言い出してないし、実は応募もしてないんです(笑)。いきなり高校にFAXで「あなたが受賞者にノミネートされました」と届いて。ただ、当時すでに商店街の活動に関わっており、情報交換のためにインターネットを利用したグループウェアを運営していたんです。それで、ITを使って世の中のために革新的な活動をする若者、ということで僕に白羽の矢が立ったようです。
ハセベ
そうなんだ。その時はすでに商店街の活動をしていたそうだけど、そもそもなぜ商店街に興味を?
木下
高校1年生のときに、乙武洋匡さんの『五体不満足』を読んだのがきっかけ。当時乙武さんは早稲田大学生で、子供たちと一緒に「心のバリアフリー」というまちづくり活動を早稲田商店街で行っていて。それを知って興味を持ったので、早稲田商店街を訪ねて活動に関わるようになりました。当時は授業が終わった後に早稲田まで行って、夜遅くまで商店街の人たちとビラを作ったりしてました。
ハセベ
ユニークな高校生だね(笑)。
木下
商店街の人には「高校時代に商店街の連中とつるむなんて、友達がいないのか」と心配されましたよ(笑)。

商店街の未来

ハセベ
その後、高校3年生で起業したわけだよね。その経緯は?
木下
99年から全国の商店街と連携して「リサイクル商店街サミット」という活動をしました。そこで「地域を超えて活動ができるようにベースとなる組織が欲しい」という意見が出たので、会社をつくったんです。とはいえ、最初は社長になる気はなくて。でも、活動をまとめたり、設立のための定款などを書くうちに、気づいたら社長に。最初は苦労続きでした。
ハセベ
高校を卒業してからは?
木下
会社設立によって全国の商店街と繋がりができたので、大学1年の夏休みに北海道から九州まで商店街を、お店に丁稚のように入りながら回ったんです。
ハセベ
「商店街マニア」だよね(笑)。
木下
そうですね(笑)。でも各商店街活動に参加する中で、商店街の問題も見えてきて。日本の商店街は、行政から補助金が出るため、非常に受け身で、まともに事業化できているものがない。そこで、海外で商業地区を再生しているケースを見たいと思って、大学3年生の時に東京財団に研究費を出していただいて米国に調査に行きました。海外の成功例を見ると、商業地区の管理組織、つまり日本でいう商店街の運営も企業経営と変わらないんですよ。それで、経営を知るべきだと思って大学院で経営学を学びました。
ハセベ
高校から商店街に関わってきたわけだけど、商店街のどこに魅力を感じたの? 少なくとも、この産業に未来があると思ったんだよね。
木下
日本全体で見た場合、小売市場の売り場面積は、大手企業が1億平方メートルほどで、商店街は5000万平方メートルほどある。また、商品販売額で見ると6割は大手で、残りの4割は商店街が占めています。そう考えると商店街のポジショニングはそんなに悪くないし、経営さえきちんとすれば未来があると思ったんです。しかも商店街って、株主がいないので、必要以上の配当圧力もないし、利益競争では負けない。
ハセベ
なるほど。それを学生時代に気づくのってすごい。今、全国の商店街の活性化事業を行っているけど、具体的な方法は?
木下
商店街の問題は、1店あたりのインフラコストが高いこと。昨年設立した、熊本城東マネジメントという別会社で既に成果が出ているのですが、商店街の店舗が1店ずつゴミ処理会社やエレベーター保守会社などと契約しているところを、商店街全体でまとめて再契約する。するとかなりの割引率になり安く済む。そうやって様々なコストを圧縮し、浮いた分を商店街の新しい事業やイベントなどに使い活性化を図る……という循環をつくっています。これは長崎や北九州、札幌など全国でも立ち上げる予定です。そして成功した場合、浮いたコストを実績に基づいて報酬としていただいています。
ハセベ
みんながハッピーになれる最善の解決策だよね。
木下
僕は従来の口だけのコンサルティングだけでなく、商店街の方々と共に初期の投資リスクも負って、事業を立ち上げるパートナーなのです。そして、問題解決の方法も、日々じわじわ効いていく漢方のような手法を使う。商店街によっては「とにかく大きなイベントを仕掛けて集客したい」という所もありますが、根本的な構造を変えないと結局はよくならない。
ハセベ
とっても感動するなあ。今後、グリーンバードで商店街のそうじをする時、木下くんと一緒に活動すれば、いろんな可能性が出てくるし成功すると思う。そのほかにも、現在「アトム通貨」という地域通貨の活動もしているよね。
木下
はい、こちらは04年から始めて6年目の取り組みです。もともと早稲田・高田馬場の商店街を中心にした地域通貨でしたが、今年から環境省と一緒に全国の様々な地区にエコ・アクション・ポイント・プログラムとして広げる予定です。
ハセベ
最後に、オススメの商店街を教えてもらえる?
木下
僕が関わっているところだと熊本。飲食から夜の店までいろんなものがごっちゃになって面白いので、ぜひ24時間滞在してほしいです。現在、様々な商店街と関わっていますが、今後共に事業展開をしている商店街が良くなって、ひいては地域全体の活性化につながればいいなあと思いますね。
●きのした・ひとし
商店街ネットワーク代表取締役社長。1982年東京都生まれ。98年早稲田大学高等学院へ入学、早稲田商店会活動に参加。2000年に『商店街ネットワーク』を設立。高校生で初代社長に就任。05年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。07年一橋大学大学院商学研究科修了。現在は、全国の商店街のマネジメント支援業務を行いながら、大学の非常勤講師を務めるなど多方面で活躍中。http://www.shoutengai.co.jp/
●ハセベ ケン
渋谷区議会議員、NPO法人green bird代表。
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属。
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