volume 67 (『ソトコト』 2009年5月号掲載)
今回の対談のお相手は、歌人、作家、ルポライターとして活躍する
田中章義さん。世界中を旅して歌を詠むライフワークのことや、
国連WAFUNIF親善大使の活動で感じたこと、
地球のためにやりたいことなどじっくり語っていただきました。

 大学1年の時に第36回角川短歌賞を受賞して以来「地球版・奥の細道」づくりを目指し、世界を旅しながら短歌、ルポルタージュ、紀行文、絵本の執筆など縦横無尽に活躍している田中章義さん。旅で体感したことを大切にしていくうちに、世界の環境や子どもの問題にたどり着き、現在は環境活動や、世界のストリートチルドレンの支援活動にも積極的に関わっている。

ハセベ
「地球版・奥の細道」と聞いて、素直にとてもかっこいいなと思いました。始められたきっかけは?
田中
大学1年生の時に短歌の賞を受賞して、それから俳句と短歌の違いはあるけれど、松尾芭蕉が日本中を旅したように世界を旅して、「地球版・奥の細道」をつくりたいと思い始めたんです。約1400年の短歌の世界で誰もやっていないことをやろうと思って、50年くらいライフワークとして世界を旅をしながら歌を詠んでいこうと。それで実際に世界を回るようになり、地理で習った大きな川の水が干上がり始めているとかを知り、「あ、地球環境は大変なことになっているのかもしれない」と感じて、自分の気持ちを短歌にするのではなく、もともと自然の豊かな場所に棲んでいた動物の想いで短歌を詠むようになったんです。
ハセベ
旅を通して、目指す方向が見えたんですね。まさに体感マーケティングと言えますね。
田中
そうですね。その時に環境問題に加えて「あまりにこの地球には路上生活の子どもが多い」と思ったんです。調べたら、15歳以下の子どもの人口約22億人の20人に1人がストリートチルドレンだということが分かった。それで、子どもたちの声を聞きながら、これも歌にしようと思ったんです。子どもたちの路上生活の想いと、地球の動植物の想いを短歌にするという2つのことをやり始め、現在に至っています。2001年には、ニューヨーク国連本部から親善大使の話をいただき、世界中を回りました。それまで現地の状況を感じることはあっても、地球や子どもの問題の全体像を見たことがなく、いい経験となりました。ある時国連環境計画のドイツ人スタッフから「地球では1秒間にサッカー場1面分の緑が減っていることを、あなたの国の人たちに伝えてほしい」と言われたんです。
ハセベ
日本人に、ですか?
田中
はい。なぜ日本人に伝えたいかというと、当時は世界の木材の流通量の4分の1、5分の1が日本に入ってきていたからでした。それまで日本はODAなどで世界に貢献していると思っていたのですが、いろんな国で専門家や現地の方から怒られて、地球規模のデータの迫力と向き合わざるをえなかったんですね。それで、これを日本中の人に何とかして伝えなくてはと思い、様々な分野のキーパーソンに会い、環境問題にどっぷり浸かっていきました。またこの時に、子どもたちにもわかるようにと、世界の現状をイラストとデータで紹介する『地球では1秒間にサッカー場1面分の緑が消えている』という本をつくったんです。

歌人としての生き方

ハセベ
環境に関する活動をしていると「環境問題といっても嘘があるのではないか」とか、「数値は正しいのか」と批判されるじゃないですか。必ずぶつかる壁ですよね。それをどう乗り越えているんですか?
田中
数値について、細かい誤差については専門家に任せようと思っています。僕はこういう活動の前に、一歌人として、前は豊かな森や草原だったところが全然そうでなくなっている現場を十何年見て回った実体験があるので、それを大事にしています。大地に立って「僕らはここに暮らしていたいけれど、想いを見て見ぬふりをするのですか」という生きとし生ける命からの怒りの声を感じながら、「動植物に対して嘘になる生き方はしたくない」という想いが真ん中にあります。旅先で先住民族や長老から「昔ここは氷がはっていたが、20年前くらいから水がぽたぽた落ちるようになって、今は川のように流れ始めている」という話も聞きました。そういう方々の体感を発信したいと思うんです。どこまでいっても自分は一詩人、一歌人の感覚です。
ハセベ
田中さんはすごくポジティブオーラを持った人で、お話をお伺いしているだけで、なんだか元気をもらった気がします。最近は、日本の若者の取り組みに目を向けているそうですが。
田中
ここ数年は自分の足元を考えたいのと、日本の子どもたちの気負っていないけれど地に足がついている、世界に誇れる動きを探すために、日本全国を回り始めました。
ハセベ
教育の中での取り組みもいろいろ出てきましたよね。でもそれが花開くには20〜30年かかると思います。もっとその速度を速めるために、子どもが憧れるかっこいい大人を養成しないといけないと思い、グリーンバードでは、ゴミ拾いやシブヤ大学などに取り組んでいるんです。
田中
なるほど。でも僕が子どもたちへのアプローチをしたいと思ったのは、教育要素だけでなく、子どもに言われると親や先生などの大人が驚き、ちゃんと伝わるから。いろんなことを知ったら、そこで動き出せる人はたくさんいると思うんです。子どもたちが大人に向かって、未来を生きる世代として語った言葉は強いから。
ハセベ
地べたから声を発する感じがいいですよね。お互い、かっこいい子ども、大人を養成するためにガンガン活動していきましょう。
●たなか・あきよし
1970年静岡県生まれ。慶応大学総合政策学部1年生の時に第36回角川短歌賞を受賞。以後「地球版・奥の細道づくり」を目指し、世界を旅しながら執筆作業を続けている。また英訳、出版された短歌が評価され2001年より国連WAFUNIF親善大使として活動。現在も、積極的に世界のストリートチルドレンの支援や環境活動を行う。著書に『地球では1秒間にサッカー場1面分の緑が消えている』などがある。 http://www.tanaka-akiyoshi.com/
●ハセベ ケン
渋谷区議会議員、NPO法人green bird代表。
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属。
ハセベケン事務所ホームページ