volume 65 (『ソトコト』 2009年3月号掲載)
今回の対談のお相手は、ホストの手塚真輝さん。
人気ホストクラブのホストを経て、現在は歌舞伎町で
ホストクラブを経営するかたわら、環境活動にも取り組んでいる。
そんな手塚さんが考えるエコ、社会貢献とは?

ハセベ
もともとホストという職業は、社会的には夜の世界というか、一般企業のサラリーマンとちょっと違う目で見られるところがあって、真輝君はそれを自覚しているよね。そういう人が社会貢献というと「嘘くさい」とか言われがちだと思う。それで気を使ってくれて「最初、僕なんかがグリーンバードに入っていいんでしょうか?」と言っていたよね。
手塚
グリーンバードというハセベさんがつくった作品に墨をたらしてしまうことになるのではないか、と考えちゃったんです。
ハセベ
商売の場にしてもらいたくないとは思っていたけれど、真輝君にはそういうところは全然ないし、むしろ歌舞伎町のホストに来てほしかった。批判ばかりしてやらないよりも何かアクションを起こすという姿勢が、かっこいいと思ったのね。ただ、ゴミ拾いの活動をするようになるまでにはいろいろあったと思う。その辺を聞かせてほしいな。
手塚
正直言って、今も、自分の活動で社会貢献をしているという意識はあまりないんです。例えばゴミ拾いは結果として社会貢献になっているかもしれないけれど、根本は従業員教育ですね。その道具がたまたまゴミ拾いだったというだけなんです。もともと表参道のゴミ拾いに参加するようになったのも、基本的に夜の世界で生きているので、帰り道、朝の時間に表参道を散歩するのが気持ちよかったから。
ハセベ
その前から歌舞伎町でゴミ拾いを行っていたよね?
手塚
はい、「夜鳥の界」で。これを立ち上げるきっかけになった新潟の中越地震も、最初は完全に100%よこしまな「目立とう」という気持ちで行ったんです。ホスト4人で400万円を集めて「ニュースになるだろう」とスーツ姿で新潟県庁に行ったんですよ(笑)。でも行ったら取材も何もしてもらえなくて。そこで、県庁の人に「体育館を見に行きますか?」と言われて、行ってみたんです。そしたら、僕は100%よこしまな気持ちで行ったのに、そんな気持ちに関係なくおばあちゃんたちが「ありがとう」と心から言ってくれた。それが大きかった。ズキッとしたんですよね。これをきっかけに「僕なんかは何やっても『ホストだから』と思われる。色眼鏡で見られる」と思っていたのが「実は自分が自分を色眼鏡で見ていたのかな」と思うようになりました。募金をしたらそのことをちゃんと見てくれる人もいるし、それによって「ありがとう」と言ってくれる人もいる。今まで仕事も自分自身も、働いていた新宿も卑下していたのですが、この経験を通して、すべて受け入れるようになったんです。それで「この気持ちを従業員たちにも感じてほしい。何かできることはないかな」と思って、帰ってから「夜鳥の界」を仲間と立ち上げて、歌舞伎町でゴミ拾いをするようになったんです。

エコ活動は、社会との接点

ハセベ
「自分が思ったことをみんなに共感してもらいたい」というのがゴミ拾いのきっかけなんだね。具体的にはそれをどうやって仲間に共感してもらおうと思ったの? とりあえず最初はやれば分かるという感じ?
手塚
そうですね、最初は従業員に命令しました。すごい反感でしたね(笑)。今も面白がってやっているかどうかは分からないけれど「うちはそういう店なんだ」と思って、みんなやっているんだと思います。僕はゴミ拾いがかっこいいというよりも「捨てる奴はかっこ悪い」ということを教えたかった。歌舞伎町に集まるのは不良と呼ばれるヤツばかりだから、不良が普通なんです。その中でかっこいいのは悪さをしない奴だという逆転の発想でいきました。一種のモラル教育です。
ハセベ
話をしていていつも感じるんだけど、真輝君はホストの地位を上げよう! ということではなくて、「みんながついてくればいいや」みたいな意識でやっているんだよね?
手塚
そうですね。僕自身がたまたまホストをやっただけで、ホストをやっていなくても「かっこよくなりたい」「成長したい」とずっと求めていたと思います。今やっている活動も「目立ちたい」がスタートだけど気づいたら掃除をしていて、その流れでグリーンバードに出会えて、散歩が気持ちよかったから参加し続けた。グリーンバードの歌舞伎町チームも、そこに行けば友達がいる面白さがあるから続けているんです。僕の唯一の、初めての社会との接点がグリーンバードですからね。お店も「夜のロハス」と打ち出してキャンドルナイトなどをやっていますが、それは従業員に社会との接点として環境問題を与え、考えてもらいたかったから。ホストの世界はどうしても閉鎖的になるから、今の世の中がどういう方向に向かっているのか分かってもらいたかったんです。例えば打ち水をやることで、あとでテレビを見て「自分たちもやっている」と思い、社会との接点ができる。批判も受けますが、エコ活動はやらないよりはやったほうがいいと思っています。
ハセベ
何でも批判して、あら探しをするより、真輝君がよく言っている、生き抜いていくための「芯」が重要なんだよね。
手塚
芯を持っていれば、何があっても平気だと思うんです。何かしら芯をもって自分が一生懸命やっていることが、社会における何億分の1の役割なのかな、と思っています。僕にとっての芯はホストとしての自分、お店、従業員です。
ハセベ
僕も「芯」を持って、お天道様に恥じない生き方をしていきます!
●てづか・まき
1977年埼玉県生まれ。中央大学理工学部中退後、歌舞伎町の人気ホストクラブに入店。現在はホストクラブ『Smappa!hyper』『APiTS』のほか、バー3店舗を経営。一方で2004年の中越地震への支援をきっかけに、ボランティア団体「夜鳥の界」を設立し清掃活動を開始。グリーンバード歌舞伎町チームでも中心となって活動している。著書『自分をあきらめるにはまだ早い』(ディスカバー・トゥエンティワン刊)
●ハセベ ケン
渋谷区議会議員、NPO法人green bird代表。
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属。
ハセベケン事務所ホームページ