volume 60 (『ソトコト』 2008年10月号掲載)
ap bank fesやMr.Childrenの
CDジャケットなどを手がけるアートディレクター
森本千絵さんとap bank fesのこと、
デザインを通して伝えたいことを語り合いました。

 今年で4回目の開催となるap bank fes。昨年は台風により、3日間のうち、開催できたのは1日のみ。今年は3日間とも晴天に。そんなap bank fes会場で、フェスのオフィシャルグッズのデザインを手がけるアートディレクターの森本千絵さんに、デザイン、環境問題から人生論まで、お話をお伺いしてきました。

ハセベ
ap bankを通して、環境のコトに関わるようになったんでしょ?
森本
はい。初年のフェスから、ホームページやTシャツ、バッグ、DVDのジャケットのデザインをやらせてもらって。最初はフェスがこんな風に進化していくとは思ってもいなかったけど、毎年やりそうなものになってきましたよね。
ハセベ
そうだね。今年は新しくマーケットができたりして。年々、増強していく感じがすごいよね。毎年会場に来させてもらっているけど、だんだん、いろんなものが柔らかく、丸くなった感じがするな。運営の人たちも前ほどバタバタしてないし、お客さんもフェス慣れしてきているし。居心地がいい。
森本
前は「この場所を使って、何かやらなきゃ。地球への思いを伝えるために、みんなで何かつくり出さなきゃ」っていう感じがあったけど、去年、台風を経験したことで自然の力には勝てないことがわかった。それで今年は全員が「晴れてるだけで幸せ」というモードになっているのが、いい感じなんだと思います。みんな肩の力が抜けていますよね。のんきに、ライブを聴かずに他のエリアで食べたり、くつろいだりしている人は、前はほとんどいなかったですよ。
ハセベ
今回で4回目のフェスとなるけど、これまでフェスでのデザインは、どんなコンセプトでやってきたの?
森本
初回は「フェスのイメージをつくって」と言われても、まだ1回も開催していないので、とっかかりがなかったんです。そんな中でBank Bandのオリジナル曲『to U』の歌だけはあったから「歌を中心にコミュニケーションの場にできればいいな」と思って、歌詞を書き上げるデザインのTシャツをつくりました。2年目は緑と青のコラージュでマップをつくって、みんなが折り重なっているイメージ。3年目のテーマは爆発で、黒い球根が破裂して、ドクロとか、いろいろなものが飛び出して、その手前を鳥が横切っているイメージで。軟らかいことを言っているより、すぐ動くエネルギー、勢いが必要だと思っていたんです。でも爆発のデザインをやったら台風がきて……。反省して、4年目の今年は全部をつなげることにしました。それで、とにかく晴れること、開催を願って、生き物や木が宇宙とつながった、ピンクの陽気な惑星のイメージのものをつくったんです。

努力して流れに乗る。

ハセベ
そうやって毎年デザインも進化していくんだね。こういう仕事に関わるようになって「環境デザイナー」って呼ばれるようになっているよね?それについてはどう?
森本
私は気持ちよく生活するために、自分の身体のこととかを考えてデザインしない限り、それは嘘になっちゃうので、できる範囲のことをやっているんです。でもそれが「環境に優しいデザイン」なんて言われるようになって、若干不安になる時期もありました。そんな時、ap bankのことで環境NPOやNGOの人たちと会議を重ねていて「意外と閉じてるのかもしれないな」って感じて。がーっと話してくる、彼らの気持ちはすごくよく分かるけど、その勢いが自分自身を塞いでいる感じで。私自身も自然の一部なので、そんなにぎゃーって人工的に考えすぎても、お互いのバランスを崩してしまう。それで逆に「私はイメージ、想像力の力で支え、人を動かす部分に特化しよう」と思ったんです。今は、フェスのデザインにしても、ここ最近が一番ちょうどいい。無理してないんです。
ハセベ
森本さんは会社を辞めて独立してから勢いを増したと思うんだけど、辞めた時って「後がない。やらなきゃ」ってならなかった?
森本
海ですよ、海。「泳がなきゃ、溺れちまう」という感じ。会社にいた時はプールみたいな状態で、好き勝手にやっていても優しい監視員がいて、何かあれば助けてくれた。でも、辞めたらそれが海になって「溺れる」と思って必死に泳いでいたんです。そしたら必死に泳ぎすぎて疲れて、逆に溺れそうになった。それで去年の10月頃に「ひっくり返って浮いていればいいんだ」と、やっと気づいたんです。「ここは海だ、自分のペースでやればいい」って。見る角度が変わったんですね。今は自然の流れにうまく乗って、そこで楽しんでいます。みんなよく「流れのままに」って言っているけど、私は努力して流れに乗っている感じ。その時その時のベストがあるので、それに合わせてやりたいと思っています。
ハセベ
来年のフェスはどんな風にしたい?
森本
デザインについてはまだわからないけど、彩りを強くして、ポップな感じにするかもしれません。いずれにしても進化しつづけたいです。あと、フェスの当日は野外でワークショップをやりたいです!
 
●もりもと・ちえ
1976年東京生まれ。1999年報堂入社、2005年博報堂クリエイティブ・ヴォックスを経て、2007年5月『goen゜(ゴエン)』を設立。ap bankによる環境複合ショップ『kurkku』のアートディレクションなどを行うほか、Mr.Children、SalyuらのアートワークやPVなども手がける。
●ハセベ ケン
渋谷区議会議員、NPO法人green bird代表。
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属。
ハセベケン事務所ホームページ