volume 59 (『ソトコト』 2008年9月号掲載)
今回の対談のお相手は、
カフェグルーヴ代表取締役の浜田寿人さん。
ウェブメディア『シネマカフェ』を運営。
また、自らも映画の買い付けなどを行っている。
映画への想い、今後注目していることなどをお伺いしました。

 共通の知人の紹介で知り合い、その後一緒に表参道を掃除したり、みんなでご飯を食べに行った浜田寿人さんとハセベケン。実は会うのは今回が3回目ですが、すでにすっかり意気投合。今回は、浜田さんの映画の買い付けのこと、映画に対する思いなどを、お伺いしてきました。

ハセベ
僕がこの前会った時に一番興味を持ったのは、一見マジメなタイプに見えない浜田君が(笑)、なぜ社会派映画やドキュメンタリー映画の買い付けにこだわっているのかということ。そもそも、なぜ映画の買い付けをするようになったのか、というところから話してもらえる?
浜田
映画が好きで、『シネマカフェ』というウェブメディアをやっていくうちに「どうやったら映画館に人が来るか、観てくれるのか」という命題にいきついたんです。その答えを探るために『風の絨毯』という映画をつくったんですが、やってみて、「製作と経営を一緒にやったら、うちの会社は潰れるな」と思い(笑)、制作はこの1回で及第点を与えて、当分やめることにしました。それで自分は何が得意かを考えたら、出来上がったものを自分のフィルターを通して買ってくることだったんです。
ハセベ
得意分野をビジネスにした、ということなんだね。
浜田
そうですね。それで、前から行きたかったカンヌ映画祭に映画の買い付けに行きました。映画のマーケットって野菜の市場のようなもので、いろんなブースを回りながら映画を観て、選ぶという作業をするんですが、そこで、久しぶりに映画業界に入る前の気分を思い出したんです。
ハセベ
それは、どういうこと?
浜田
映画業界に入ると、映画が趣味からビジネスに変わるんですよ。映画を見ると製作費や力の入れ方がだいたい分かるし、そういう目で見ちゃうんです。それに、僕らが観る映画って新聞やテレビで紹介されたり、先に誰かのフィルターを通してから観るじゃないですか。でも映画祭に行くと、誰も映画のことを知らない。監督、あらすじが書かれた紙しかない。無名な監督とかは「スペイン映画。恋愛もの。ちょっとゲイ」とかね。そこで、改めて中学、高校生の時に、自分でいい映画を発見した時の気分を思い出したわけです。そうして最初に出会ったのが『約束の旅路』というエチオピアの難民の映画だったんですよ。

ちょっとだけ使命感

ハセベ
いきなり社会派映画に惹かれたんだ! そして、その映画の日本での放映権を買ったんだね。
浜田
有名なキャストがついている作品は、数千万円以上でとても買えない。僕が感動した『約束の旅路』は「黒人が主人公でユダヤ教を扱っている、ノンキャストのフランスのドキュメンタリー映画」という、有名なキャストの映画に比べて売りにくさ100倍くらいの映画だったので、値段が全くついていなかった。それで、僕らが出せる金額で買うことができたんです。
ハセベ
有名な出演者が出る映画と違って、難しい映画を一般の人に見てもらうのって、結構大変じゃなかった?
浜田
はい。難しい映画だから難しくするのではなく、いろんなアイディアを出し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と一緒に共同キャンペーンも行いました。公開後、映画がヒットしたお陰で、世界各国のセラー(映画を売る人)の間で僕は「難民の映画を日本でヒットさせた”難民映画バイヤー”」として知られるようになり、それから、黒人映画とか難民の映画とかのドキュメンタリー映画や社会派映画が集まるようになったんです。
ハセベ
すごいニックネームがついたね。難民映画バイヤーと呼ばれる自分をどう思う?
浜田
ちょっとマジメな人のイメージが強すぎるだろう、と(笑)。でも、子どもが生まれ、父になり、社会を自分なりにつかみたい気持ちが出てきたのかもしれません。仕事としてやりがいを感じています。娯楽作品を日本に持ってきたい人はたくさんいるけど、逆に社会派映画はみんな買わない。ちょっとだけ使命感を感じるし、そこで自分を高めていきたいと思っています。
ハセベ
映画だから出会える情報ってあるじゃない? 中国の工場が主な舞台の『いま ここにある風景』も、映画でしか撮れない風景や、映画でしか知ることができない情報ばかりで面白かった。
浜田
あの映画に出てくるアイロン一つをとっても、僕らは最終形しか見ないから、中国でどうやってアイロンをつくっているか、そのプロセスは考えないじゃないですか。多くの家電製品が中国で生産されている今、中国製がよくないとか言って、一面性だけ見てもだめ。それを映画だと、映画でしかできない方法でカッコよく描くことができるんですよ。
ハセベ
浜田君は、すごく社会に対して鋭い視点を持っているよね。追い風に向かっていく感じがとってもカッコイイ。次はどんな作品に注目しているのか教えてもらえる?
浜田
これから考えなきゃいけないのは食料危機。来年公開予定の作品で、世界の食料危機を描いた『We Feed the World(世界の食べさせ方)』という映画があるんです。先進国の人たちは自分たちの必要量の10倍の食料を生産していて、その9割をゴミにしているという話。
ハセベ
とっても面白そう。この作品も期待していますね!
浜田
日本にいると、意外と海外のことで目を向けてないことって多いんですよ。それが、日本にそのまま当てはまる場合もある。僕ら日本人にとって人ごとでないこと、日本にとっていいモノ、それを見つけてどんどん紹介していこうと思っています!
 
●はまだ・ひさと
カフェグルーヴ代表取締役社長。1977年6月生まれ。高校時代に単身渡米後、ソニーを経て2000年6月に22歳でカフェグルーヴを起業。現在は代表取締役として、映画の買い付け、映画のプロモーションサイト制作、企業などのブランディング、映画やライフスタイル関連の独自メディアの運営、レストラン経営、ワインや葉巻の輸入など、幅広く事業を展開している。http://www.cafegroove.com/
●ハセベ ケン
渋谷区議会議員、NPO法人green bird代表。
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属。
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