volume 51 (『ソトコト』 2007年12月号掲載)
ビジネスマンとしてできること 谷貝 淳×ハセベケン
エコをテーマとした新店舗を渋谷にオープンさせたティンバーランド。のメーカーからはじまって、総合ファッションブランドとして人気を誇っている。オープニングに、green birdと渋谷の街を掃除してきました。

「いやあ気持ちがいいもんですね。とってもいい気分で、夜もぐっすり眠れましたよ」と話すのは、green birdの活動に参加したティンバーランド日本社の社長、谷貝淳さん。まだ44歳の若さ。大手生命保険会社の日本社専務から、昨年ティンバーランド日本社長に就任した。慶応大学から広告代理店に入り、30歳で退職。同じく広告代理店を30歳で辞めたハセベケンと、共通する部分がある。

谷貝
広告代理店時代はいろいろな人と会い、新しい情報を得たり魅力のある職場でした。ただ許容量を超えちゃったというかね。安易に積んだもので満足して一生このままいっちゃうんじゃないか。給料もいいし満足していられるけど、油断するとそこでダメになりそうな気がしたんですよ。それで1回壊すことにしたんです。怖かったけれど、40歳になったらもっと怖くなると思った。だから30歳のときに辞めたんですよ。それから、ビジネスが好きなんです。経営が好き。広告は一つのレバーでしかないじゃないですか。レバーを全部扱える立場になりたいな、ハンドルを握りたいなと思ったのです。
ハセベ
ぼくも30歳の頃に40歳、50歳の自分が想像できてしまって、ハンドルを握りたくなったんです。谷貝さんは辞めてからどうされたんですか。
谷貝
ヨーロッパのビジネススクールに行きました。卒業が迫ってきたとき外資系コンサルティング会社から誘われて入りました。東京オフィスですが。
ハセベ
今でも仲間と会うんですけど、中には辞めたい辞めたいと口にはするけれど結局辞められない、一歩踏み出せない奴がいるんですね。
谷貝
広告代理店や大学の同期と飲んでて一歩踏み出すかどうかの話になる。9割5分は辞めたいとか言う。でも言ってるだけなんですよ。酒飲みながら話して、それで少し気持ちを晴らしているだけ。実際にやるかやらないかが全てだと思うんですけどね。
ハセベ
そこを超えるスイッチはなんなのでしょうね。環境のこととも似てると思うんですよ。やればいいのに、やれないみたいな。そこをみんなが超えてくれるといいんですけれど。谷貝さんは、実際にgreen birdの活動に参加してみていかがでしたか?
谷貝
ぼくは子供の頃ケニアのナイロビや、ベネズエラのカラカスに住んでいたんです。仕事でも海外によく行きます。アメリカなんかだと、どんな街かと尋ねると、俺たち住人が守っている、きれいにしている街だ、と誇らしげに言うんです。これが日本だと、お上のせいにしてしまうでしょう。日本は民主主義といいながら、街にいる市民の顔が見えてこない。公共意識がない国だと思ってました。でもgreen birdは街を誇りに思って活動している。街は自分でつくっていくものだという意識が強い。それが気持ちよかったですよ、一緒に掃除していて。ぜひまた参加したいです。
ハセベ
そう言ってもらえると嬉しいです。市民運動というと闘ってる感じに捉えられがちですよね。NPOという言葉が出てきて本当の意味での市民運動の形ができてきている気がします。敷居が低くなって、いいコミュニティができてきている。意識せず、やっていくうちにこうなってきたんですよね。
谷貝
green birdは緩い連合体のような感じがいいなと。説教じゃなくて楽しむ。街をきれいにすることが格好いいというのが面白い。第一歩が入りやすい気がしましたよ。
ハセベ
強制ではなく、気やすく、気が向いたらやるっという感じがいいかなと思ってるんです。

人間力が大切でした

谷貝
ティンバーランドのCEOは社会貢献活動に思い入れが強いんですよ。なので社員は、年間40時間の社会貢献活動が義務になってるんです、全社で。清掃活動や老人ホーム訪問をやっています。日本には300人くらいスタッフがいて、話を聞いてみるとボランティア活動をやってみたいという気持ちはみんな持っているんです。でもきっかけがない。お膳立てがあればもっと多くの人が参加すると思うんですよね。
ハセベ
まだまだ参加しやすい仕組みができていませんよね。谷貝さんご自身はいつ頃から環境や社会貢献に興味を持ち始めたのですか?
谷貝
私は昔、ビジネスでのし上がることしか考えていなかった。そう洗脳されていたんですよ。ところが、あるとき若い社員が定時に帰っていいかと聞いてきたんです。はっきり言って仕事のできる社員じゃない。当時の私から見たらダメな社員だった。でも彼はボランティアをしていると言うんですよ。目の不自由な人のために本を読んで録音するボランティア。トンカチで頭を叩かれたような気がしました。お金を生み出す能力はないかもしれないが、彼はとっても人間的な活動をしていた。一方の私はボランティアなんてしたこともなかった。かなりショックを受けました。経営者って社員をどう見るか扱うか、という気持ちが大事だけれど、それまでは仕事だけでその人を評価してしまっていた。でも人生の一部分に過ぎない、仕事は。その時から、人を全人的に判断しなくちゃいけないと思った。人は、仕事以外にもいろいろな顔を持っているんだと、多面的に人を見られるようになると、組織を丸く見えるようになった。それでずいぶん変わりました。
ハセベ
なるほど、価値観が劇的に変化したわけですね。最後に谷貝さんの今後の夢を聞かせてください。
谷貝
海外にいる期間が長かったせいか、日本を誇りの持てる国にしたいなと思うんですよ。それの一助になる仕事をしていきたいですね。それと私たちもgreen birdのような形で、街の環境や社会に対するインパクトをつくっていきたいと考えています。
ハセベ
いいですねぇ。渋谷の街を一緒にもっと面白くしましょう!
●やがい・あつし
ティンバーランド ジャパン代表取締役社長
1963年東京生まれ、ケニア・ベネズエラで少年期を過ごし、慶応大学経済学部卒業。電通を30歳で退社し、スイスIMDにてMBA取得。マッキンゼー、バリラジャパン社長、アメリカンファミリー生命専務を経て、2006年より現職。
http://www.timberland.co.jp/
●ハセベ ケン
渋谷区議会議員、NPO法人green bird代表。
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属。
ハセベケン事務所ホームページ