(『ソトコト』 2007年8月号掲載)
NPOを学問にしている先生。そういう時代になったんだ、と感激。今なら大学に入り直すのもいいかなあとハセベケン、キャンパスに行ってまいりました。

以前に一度対談でお会いした坂口緑先生。なんと大学でNPOについて教えているという。ハセベケンとしては、びっくり。学生さんたちにはどういう風に受け止められているんだろう。今後どういう方向にNPOは進むのがいいのだろう。いろいろ話したくて、白金台の明治学院大学に行ってきました。

ハセベ
僕のケースを話すと、NPOをやろうと思ってはじめたわけじゃないんです。表参道の清掃キャンペーンをやりたくて、でも協賛をつのってやっていくために法人格が欲しいとなって、調べたところNPO法人がいいシステムだと思ったんです。社会に貢献している活動なら非課税だというのが特にいいポイント。困ってることがあるとすると、未だにNPOは怪しいと思われている部分があるということ。グリーンバードは知名度が大分あるけれど、でも怪しいとか言われてしまうこともある。協賛もらってることとかを誤解されるんです。でも、全体的には地位が上がってきているということはありますね。先生みたいに大学で学問的に研究している方もでてきたわけですし。

坂口
NPOには経営学からのアプローチもあるし、法律学からのアプローチもありますが、私は社会教育、社会学の領域で研究しています。3種類あるんですね。ただ学問になると、どうあるべきとかいった理念的なことを議論しがちなんですよ。NPOの地位が上がってきているとしたら、それはひとえに現場の活動があるから。私が研究しているのは市民社会論という領域なんですが、実際に活動している人たちがいるから、私たちは研究ができる。現場があるからこそ、NPOで働きたい、CSRの仕事をしたいという学生も近年、とても増えています。私が大学を卒業した15年前には考えられないことです。当時もNPOに就職する人はいましたが少数派の変わり者でした。実は私も少し考えたので変わり者の一人ですね。

ハセベ
学生で就職先としてNPOを考える人が普通にいるというのは僕からしても驚きですね。

坂口
そういうところに実際に就職するのはやっぱり特別やる気がある人ですけれどね。まだ多くはありません。でも新卒では行かなくても実社会に出てからNPOやボランティアに参加する方が役に立つのでそういう道を選ぶ人も多いんです。

ハセベ
僕も広告代理店に勤めていたことで、メーカーや流通など、それぞれの企業の考え方がわかり、NPO活動の役に立ちました。確かに一度社会に出てみるのも大切ですね。でもやっぱり、新卒でNPOという体制が整ってくるといいんですけどね。興味を持つ人はどんどん増えていますし。

今後のNPOの行方

坂口
専従で活動したい人と、余暇を利用して活動したいという人、あとはリタイアしてから活動するという人、3つの道がありますよね。一つの組織にいろいろなルートを通ってきた人が混在してるのもいいのかな、と思います。ボランティア活動の場合も、大きくわけて2つの考え方が括抗しています。ひとつは、困っている人を助けようとする他律的なボランティア。もうひとつは、自分探しを目的とする利己的なボランティアです。この2つの考え方は、理念的にはたしかにぶつかり合ってしまうけれども、私は、どっちでもいいなと。どっちがいいという答えは重要でない。人のためにと思って自分を見つけることもあります。その逆もある。関係性が多様になり、いろいろな関係が開発されていくという体験が重要で、他律的でも自分探しでも別に動機はどうでもいいかなと思っているんです。NPOに関わるプロセスも同じなのかも知れない。参入障壁はなるべく低いほうがいいですよね。

ハセベ
すごい数のNPOができて、すでに淘汰されはじめてると思うんですが、今後どう発展していくとお考えですか?

坂口
NPOがメジャーになっていく流れが元に戻るということはないと思います。普通に暮らしている以上、労働に精魂を傾けざるを得ない社会ですよね。寝る時間以外は働くということにエネルギーを取られる。その対価である賃金を遊びや旅行でぱっと使ってバランス取る自転車操業。ここから抜け出すための別の場所が必要です。その場所がNPOやボランティアのセクターだと私は考えています。

ハセベ
そう考えると、NPOは新しく生まれてきたものではなく、ずっとあったものがちょっと形を変えたものなのかもしれないですね。

坂口
それが仕事として成り立っていくことが新しく、しかも自転車操業の車輪としての労働とはちょっと違うところがまた新しいんじゃないでしょうか。

ハセベ
魅力や可能性はどの辺にあると思いますか。

坂口
普通の会社組織での労働って、こうすべきという目標があらかじめ設定されていて、ゼロから目標を設定できる場合はほとんどない。社会の趣味を読み取っていくという一見自由そうなアーティストも学者も、やはりどこか経済的な目標に縛られていて本当にクリエイティブであることはきわけて困難だと思います。でもボランティアやNPOは制約はあってもクリエイティブに考えられる部分がある。経済的価値から自由だからこそ発揮される創造性が確実にあると思うんです。個人一人一人のそれぞれにあったクリエイティビティを発揮できる得難い領域だなと思います。

ハセベ
経済的にはいろいろと大変なんですけどね。でもめげずにやれるのは確かにそういう自由さが楽しいということはありますね。

●坂口 緑(さかぐち・みどり)
明治学院大学 社会学部社会学科准教授
社会学専攻。2000年東京大学大学院博士課程単位取得退学。研究領域は生涯学習論。共著に『ポスト・リベラリズム』(ナカニシヤ出版)、訳書にチャールズ・ブコウスキー『ポスト・オフィス』(幻冬舎アウトロー文庫)など。

●ハセベ ケン
渋谷区議会議員/NPO法人green bird代表
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属。
ハセベケン事務所ホームページ  http://www.hasebeken.net/

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