(『ソトコト』 2007年2月号掲載)
表参道から発信された新時代イルミネーション。照明デザイナーの面出薫さんにこれからの時代のトレンドを象徴するアカリウムの意図を聞いてきました。

原宿表参道で、1991年から98年まで実施されていた年末イルミネーション。本家ともいえるパリのシャンゼリゼ通りでは2006年も美しく電飾が飾られた。表参道ではケヤキの保護の理由などから中止されていたのだが、2006年12月5日から「表参道akarium(アカリウム)」として年末ライトアップが復活した。デザインは面出薫さんが担当。環境により気を配った、新しいタイプのライトアップを実現した。行灯をイメージしたそのライトアップは和の雰囲気を醸しだす。

ハセベ
評判がいいですよ。賛否両論もありますけどね。過去のものと比べると少し寂しいかなっていう人もいる。でも改めてここが参道であることを思い出してくれる人がいて、ああ、これでよかったんだと思いました。表参道らしい価値の提案という意味でよかったと。

面出
今回仕掛けたことは、世の中にボディブローのように利いてきて、「あっ、そういえば表参道がこういうライトアップの最初だったよね」って言われるといいんですけどね。初日、点けたときには「つまんない!」って言う人もいたんですよ、光の洪水を期待していたということで。でも今の時代の風を受けてわかってくれる人も多いですね。

ハセベ
2年、3年続くとわかってくれる人も増えると思うんです。06年の作品は復活の第1弾としては一番良い方法だったと思うんです。神戸のルミナリエとは場所の持っている意味も違いますしね。表参道でしかできないことをしたいと思ってましたから。

面出
今回は主催者側の表参道の欅会の方はコンセプトがしっかりしていてこれでいい、と言ってくれた。でもたぶん代理店やスポンサー側はもう少し派手さがほしいということはあったのだと思います。難しいのは、あまり新しいことをやってしまうと意味がわからないと言われるわけですね。少しだけ新しいことをやっていくのがいいと思う。その間合いが大事ですね。

ハセベ
純粋なアートではなくスポンサーがあるものですからね。そこは代理店にいた身でよくわかるんです。作り手とスポンサーの両方の気持ちが。そこには工夫が必要かもしれません。お祭りって協賛している人や企業の名前を掲示するじゃないですか。そういう感じで毎年名入りの灯籠を作ったりしたらいいんじゃないかとか考えています。

面出
単発的なイベントでなく根付いて地元の活力として受け入れられ固まっていくと違ってきますよね。原宿でも夏の風物詩になりつつある「よさこい」みたいにね。

ハセベ
「よさこい」についても異論反論が最初すごくあったんですよ。それと比べると今回はとても受け入れられていますね。ポイ捨てのゴミについても点灯してから普段より少ないんですよ。地元の人はちゃんと見ています。

面出
1か月の期間中にいろいろ表情が変化する。そういう行灯を仕込んでいるんです。でも全部の表情を一度に見せることはできませんからね。どんな風に受け取ってくださるか皆さんの表情を観察してるところです。

ハセベ
だいたい、ゼロから一を作る人は一番大変なんですよ。で、その一を十にスケールアップする人が金持ちになるんです。ぼくもどうやらゼロから一タイプ。でもそれはそれで、初めてというのはやりがいがあって愉しいんですよね。

面出
照明デザインというもの自体がまだ、新しい仕事でしょう。ゼロから一、常に何かを仕掛ける立場にあるわけです。日本でも海外でも新しい試みをやるわけです。やっぱりそれだと儲からないですね。

ハセベ
今までこういうパブリックな大きなライトアップに関わったことはありますか?

面出
こういう長期にわたるものは初めてですね。パブリックなものは責任がありますよね。僕だけのことじゃない社会的な責任。街全体がやるんだから、失敗は許されませんね。

ハセベ
パブリックはコワイですよね。

環境にやさしいライトアップイベント「アカリウム」は1月8日まで開催。17:00〜22:00の間点灯している。

面出
いろいろな賛否は必ずあるけど、グワッと否にいっちゃうととんでもないことになりますからね。

ハセベ
ただ、ひものかけ方を間違えないようにすればちゃんとした報道をしてもらえますね。多くの人に知ってもらうことができる力があります。

面出
「表参道だからああいう灯りなんだね、やはりロハスな価値観が表されているね、あそこから始まったんだね」、と言われるようになるといいんですけれどね。いいものであると評価されれば世界中に広まるわけです。たとえばシャンゼリゼは今年どんな灯りだろうと僕らは気にしているわけです。それと同様にパリの人が表参道に注目してくれるんじゃないかと思うんですよ。

ハセベ
いろいろな希望、未来が見えてくるんですけど、それでもいろいろな意見は出てくると思うんですよ。それはきちんと聞いておきたい。なるべく大きな合意形成を作って続けていきたいなと思っています。そういう意味でも、よいスタートがきれたかなと。

面出
ゆったりとした明るさで、人に、街に、環境に、ケヤキに優しい。そういうわかりやすい言葉でもっともっと広がると思うんです。そういうことでエコアヴェニューの神髄に灯りがともればいいと思います。

 

●面出 薫(めんで・かおる)
照明デザイナー 株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ代表取締役
1950年、東京生まれ。東京芸術大学大学院修士課程を修了。住宅照明から建築照明、都市・環境照明の分野まで幅広い照明デザインのプロデューサー、プランナーとして活躍するかたわら、市民参加の照明文化研究会「照明探偵団」を組織し、団長として精力的に活動を展開中。東京国際フォーラム、六本木ヒルズなどの照明計画を担当。国際照明デザイン大賞、日本文化デザイン賞、毎日デザイン賞などを受賞。著書に『世界照明探偵団』(鹿島出版会)、『都市と建築の照明デザイン』(六耀社)など。

●ハセベ ケン
渋谷区議会議員/NPO法人green bird代表
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属。
ハセベケン事務所ホームページ  http://www.hasebeken.net/

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