(『ソトコト』 2006年7月号掲載)
原宿の街の中に拠点を四つかまえ、行き交う人々の心に届く広告を創り続けるクリエイティヴディレクター箭内道彦さん。ハセベケンが何度も仕事をご一緒してきた先輩です。今度渋谷区が立ち上げる「シブヤ大学」でも仲間に加わってもらいます。今回はちょっと改まって原宿を、広告を、コミュニティを語ってみました。

「風とロック」の箭内道彦さんはハセベケンがいた広告代理店の先輩だ。ハセベとはタワーレコードの「ノーミュージック・ノーライフ」などの仕事をしてきた。渋谷区議に立候補したときにも、ポスターの制作にかかわるなど、応援してくれた。ハセベの提案ではじまる「シブヤ大学」のプロジェクトにも参加している。そして、広告代理店を辞めて独立後はオフィスを原宿に構えている、町内のお隣さんでもある。

箭内
最初は自宅で仕事をしていたんですけど、仕事場を探してたら偶然原宿に見つけて。ただやっぱり原宿は受け入れてくれる街だなと思いました。で、来てみると『地元』という気持ちにさせてくれる街で。大学から東京に来て、そんな感覚になったことはなかったです。というか地元という言葉を新鮮に感じました。新しいキーワードとしての、ポジティヴな意味での地元感覚を感じましたね。あとちょっとホメておきますとハセベケンが風景になってる、という感じもいいです。通りかかるとgreen birdがそうじをしている。あ、声をかけようかな、いや別にいいか、って通り過ぎる。

ハセベ
それは嬉しいですね。じっさい原宿は昔からクリエイターの人たちが集まる場所でしたし、明治神宮の参道という側面と戦後、米軍関係者の住宅が近かったという側面などから、古いものも新しいものも受け入れられるという街の性格があると思うんですよね。頑固じゃないというか。若い人にもお年寄りにも、日本の人にも外国の人にもオープンである、共存能力がある。そんな街なんですよね。

箭内
とにかく純粋におしゃれをしたい、という高い志を感じる街だよね。ぼくが作ってる広告を見てもらう層が集まっている街。やっぱり、自分はこういう人たちにむけてものを作ってるんだ、と感じながら仕事をしたいと思ってるんですよ。高層ビルの窓も開かないような部屋では広告を作りたくない。無計画な人間なので会社もいろいろ増やしたりしているうちに原宿に4か所ですか、拠点ができていますけどそれも別々の場所。そこを移動するときに街を見られるのがまた贅沢というか、贅沢な廊下と呼んでます。

ハセベ
そんな原宿で、箭内さんは去年は『広告サミット』を開きましたね。ぼくも参加させていただきましたけど。

箭内
広告というのはこんなに面白いんだ、楽しいんだということをみんな忘れてしまっている気がしたんです。それこそ窓も開かないビルの中でね。だから原宿に来て、広告を届けている相手の顔を見て、広告を作ることのワクワクドキドキを思い出してほしかった。

ハセベ
ぼくはgreen birdで、ごみをポイ捨てしないことをアピールする、区議として街をプロデュースする、ということをやっていこうと思っていますけれど、そうしたことと箭内さんの広告サミットというのはつながってる気がするんですよ。ひとつ祭りをつくる、というような感じです。

箭内
祭りは好きなんですよ。でもたとえばぼくも地方出身ですけど東京では祭りに参加できる地元っていうのがない感じだったわけですよね。それが原宿にならありそうな感じがする。そういう街をプロデュースするというのは面白いですね。

ハセベ
『別冊 風とロック』
PARCO出版刊 2000円(税込)
「自分の好きなものだけ詰めこんだ超素人編集」と、言うように箭内さんのライフワークといえる『月刊 風とロック』の創刊1周年を記念した書籍『別冊 風とロック』が5月27日に発売決定! 編集長・箭内さんのやりたいことが詰ってます。
そういう意味では、シブヤ大学もそうした存在になることを夢見て企画したんですよね。

箭内
シブヤ大学に関しては、よくある普通の市民大学になってしまわないように、ぼくはいろいろと茶化す役割だと思ってるんですよ。みんながうらやましがるような、ほかじゃできないだろう、というようなことをする場にしたい。人前で話すなんてしたことない、という人が新しいやり方を見つけていく、という感じだといいと思うんですよ。もちろん、講演や授業のプロも参加してくれないとダメなわけだけれど、そういう人たちがやりなれてることをこなす、という感じになりそうなときに追い詰めて新しいことを作り出してもらう役割というか。


 新しいこと、面白いこと、楽しいことが街をつくり、人と人とをつなげる。そうした場所としてのシブヤ大学だったり、広告サミットだったりする。活性化したコミュニティが、新しい時代をつくっていく。箭内さんは、そうした活動を喚起するスイッチをそこらじゅうに仕掛けて回る悪戯小僧のようだ。たとえばこんなことを言う。

「クリエイティヴ宝くじ、って思いついたんですよ。いっぱい宝くじを買っていいじゃないですか。当たらなくても。これやりたい、あれやりたい、って頼まれてもいないんだけれどたくさんやりたいことをどんどん口に出してみる。自分ができなくても誰かがやるかもしれないじゃないですか。もしかしたら大当たりになるかもしれない。ぼくはたとえば環境についてなんてことをえらそうに語れるほど知識もないけれど、できるならぼくの仕事のスキルで、たとえば1件でも殺人を減らすことができたら、と願っています。そういう気持ちはあります。何かできることをやっていく、口に出していく」

 ハセベケン、よき先輩、よき隣人に恵まれてます。


 

●箭内道彦(やない・みちひこ)
クリエイティブディレクター
1964年福島県生まれ。1990年、東京芸術大学美術学部デザイン科卒。博報堂を経て、2003年風とロックを設立。2005年、『月刊 風とロック』創刊。主な仕事に、タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.キャンペーン」、資生堂「uno お笑い芸人52人CM」、森永製菓「ハイチュウ」、フジテレビジョン「きっかけは、フジテレビ」など。

●ハセベ ケン
渋谷区議会議員/NPO法人green bird代表
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属。
ハセベケン事務所ホームページ  http://www.hasebeken.net/

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