(『ソトコト』 2006年4月号掲載)
同潤会青山アパートの誕生から約80年、2006年2月、ついに表参道ヒルズが誕生! 「街との調和」というテーマのもと、建築構造やスタッフの取り組みなど表参道を楽しくする仕掛けが満載らしいです。そこのところ、館長さんにたっぷり聞いてきました。
ハセベ
ついに完成した表参道ヒルズ。毎日すごい人出ですね。荒川さんも、嬉しい悲鳴という感じでしょう。

荒川
おかげさまで、オープン初日には入場規制をいたしましたが、7万1000人という方にいらしていただけました。平日になれば少し落ち着くかと思いましたが、連日たくさんの方にいらしていただいています。

ハセベ
お昼の飲食店、すごい行列ですもんねえ。実際完成して入ってみたときには感動しましたよ。表参道の傾斜とほぼ同じにした館内のスロープ、同じ敷石を使っていたり、表参道から表参道ヒルズに入っても違和感が全くないですね。中心が大きな吹き抜けになっていることで地下に下りても閉塞感がないし、とてもユニークで素晴らしい建築になっていますね。

荒川
お客さまのなかにも、建築に興味がおありの方ですとか、建築を勉強されている学生さん風の方の姿が目立ちますね。

ハセベ
やはり、この表参道にしっかりと溶け込もうとされている姿勢がとても嬉しいです。

荒川
私も若い頃からこの界隈にはよく来ていましたし、住民の方にしても外からいらっしゃる方にしても、とても思い入れを強く持たれている場所だと思うんです。さまざまな思い出もおありでしょうし。私たちもこのプロジェクトでは資料を調べたり、街のことを古くからご存知の方のお話を伺ったりして、とにかくこの街にふさわしいものをつくるためにいろいろと勉強いたしました。

ハセベ
もともとが明治神宮の表参道としてつくられた街でしたが、その後同潤会青山アパートが昭和2年に完成し、戦災のあとは代々木公園のところにワシントン・ハイツという米軍の宿舎ができた関係もあってアメリカなど西欧文化に触れられる街になる。そして日本に世界に文化を発信する拠点として発展してきたという歴史がありますからね。

荒川
そうですね、この建物がそんな表参道そのものでありたい、と思っているのです。街との調和がテーマですね。六本木ヒルズの場合は一から街をつくり上げたわけですが、こちらはすでに完成している街の中につくるわけですから自ずと違います。当社の社長の森に、この建物の中だけではなくこの街のどこに何があるのか、お客様に聞かれたら答えられるようにしたらどうかといわれました。森が昔ヨーロッパで家具を探していたときに、ある店でうちにはありませんけれど、あそこの店に行けばいい品があると教えられてとても嬉しかったそうです。

ハセベ
いい商店街にはそういう一体感がありますよね。

荒川
そうですよね。ですから表参道ヒルズではコンシェルジュを置くことにしまして、5人おります。それぞれがブランド店の店長やホテルのコンシェルジュを経験しておりまして、すでに顔なじみになって声をかけてくださるお客様もいます。

ハセベ
表参道ヒルズに行けば表参道の情報がいろいろと手に入る、というわけですね。

荒川
そういうふうに溶け込んでいければいいと思ってるんです。そして表参道ヒルズ自体も職人、プロフェッショナルがお客様を迎え、館全体が専門性の高いセレクトショップであるべきだと思っています。

ハセベ
それから、同潤会青山アパートを再現した同潤館もありますね。グリーンバードは最初、青山アパートに事務所を開いたんです。やはりあの建物には特別な思い入れがあります。ぼくたちは多分入居者のなかで一番最後までいた事務所の一つだったと思います。でも、本来はあんなに白い建物だったのですね。

荒川
やはり戦災の影響ですっかり色が変わってしまっていたんですね。同潤会アパートにはギャラリーですとか、デザイン事務所ですとか、クリエイティヴな空間がありましたが、その雰囲気は表参道ヒルズでもしっかりと残しています。

ハセベ
フリースペースでは、ぼくたちもいろいろと企画を考えたいですね。でもこれだけ全国的に注目されていると緊張されるんじゃないですか?

荒川
そうですね。ちょうど耐震強度偽装事件などもありましたし、いろいろな意味で注目度が高いことは意識しています。たぶん商業施設としては開業前に消防訓練をしたのはうちがはじめてだと思います。居住者の方にも参加していただきました。バックヤードの雰囲気も、非常にいい感じです。

ハセベ
ぼくたちも共存してやっていくためにいろいろと交流や共同した活動をしていきたいと思っています。やはり新しい街づくりというのを発信していくという発想が大事だと思うんですよ。表参道が何かやると、とても大きなインパクトを社会に対して行えます。プレッシャーも強いですけれど、大きな可能性を持っていると思うんですよね。

荒川
もう少し落ち着いてきたら、グリーンバードの活動などにも参加していけると思います、いろいろと新しいことをやっていきたいと考えています。

ハセベ
そうですね。やはり一つのモデルになるといいと思うんですよ。人がただ通り過ぎていくだけの空間ではなくて、一つの共同体としてのモデルに。

●荒川信雄(あらかわ・のぶお)
森ビル株式会社表参道ヒルズ館長。1964年茨城県生まれ。87年森ビル株式会社入社。ラフォーレ原宿企画開発部を経て、99年株式会社ヴィーナスフォート館長へ就任。06年に表参道ヒルズ館長に就任。

●ハセベ ケン
渋谷区議会議員/NPO法人green bird代表
0972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を代謝。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。
ハセベケン事務所ホームページ  http://www.hasebeken.net/

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