(『ソトコト』 2005年5月号掲載)
やっぱりナイキはかっこいい。商品自体のデザインや発想はもちろんだけど、企業としての姿勢がすばらしい。グリーンバードも設立当初から世話になっています。どうも日本では、企業の社会貢献がまだまだ受け入れられないところがあるみたい。そこのところ、ハセベがとことん話してきました。

ハセベ
最初にグリーンバードを立ち上げて活動をしているときにナイキの方と知り合ったんです。それで、君たちの活動はすごくおもしろい、お手伝いしたいと言っていただいた。すごく嬉しかったです。で、それならビブスを作っていただけませんかとお願いして200着、作ってくれた。

水上
表参道のエリアにナイキの直営店があったという点で縁がありましたよね。

ハセベ
とても評判がいいんです。かっこいいって。あのビブスを着たくてそうじにくる人もいるくらいで。その後も、渋谷区の美竹公園へのジョーダン・コートの寄贈など、積極的に社会貢献をされている姿勢に本当に共感しますね。

水上
企業文化として、社会貢献するのはスポーツ環境を守っていく上で当然だという社風があるんですね。

ハセベ
そういうところが日本では遅れているんです。企業のほうも何か硬くなってしまいますし、行政の側も身構えてしまう。

水上
そうなんですよね。私たちとしてはごく自然に社会貢献活動をしているわけなんで、行政の方々もオープンに受け入れて、利用していただきたいと思っているんです。宣伝のためだけじゃなく、真剣に社会貢献をしたいと言うことで考えておりますから。企業だけでは、なかなか実現できない壁があります。ぶつかる課題がありますからね。

ハセベ
そうですよね。逆に行政だけではできないことがるし、僕たちのようなNPO、市民の側にもできないことがある。企業が資金を出してくれて、市民は汗をかく。行政はそれをコーディネイトする。そういうスムーズな役割分担で社会貢献をやっていくのがいいと思うんですよ。そういう企業ってかっこいいなあって、ぼくはほんと、感心しちゃうんですよ。

水上
たとえば、Reuse a shoeという、スニーカーのリサイクルの活動を行っているのですが、これがアメリカの本社ではじまったのは1993年ごろなんです。それも、社内の何人かが声をかけあって、手探りでやりはじめた。そして形を作っていって今では全米規模、そして世界規模で行おうとしています。

ハセベ
トップダウンじゃなかったんですね。それはやっぱりもう企業哲学が違うとしか言いようが無いなあ。

水上
本社のリサイクル工場に行くと、その様子から一から積み上げていったんだなあっていうのがよくわかるんです。少しずつビルドアップされて出来上がったというのが目に見えてわかるんですよ。基本的に、スニーカーは3つの部分に分けます。

ハセベ
ほとんど三枚おろしですね。

対談の話題にもあがった、ナイキのスニーカーのリユースの仕組みを理解する教育キットがアメリカでは安価で販売されている。学校の先生を対象にしており、生徒たちが「リサイクル」について解りやすく学べるようになっている。

水上
そうですね。組成が違う3つの部分をそれぞれ粉砕して遠心分離器などにかけて分けていって、人工芝などにリユースしていくんです。そして、いろんな方法で回収を試みています。例えば、各地域には、社で作ったこのシステムの宣伝パッケージを配布します。そこには、どうやって地域で古いスニーカーを集めるのか、集めたスニーカーをどうやって運ぶのか、などのハウトゥと、このシステムを周知させるためのラジオ・コマーシャルなどがパックされています。地方のラジオ局にコマーシャルを流してもらう資金もナイキが出しています。

ハセベ
またかっこいいよね、このパッケージも。

水上
実は燃えないゴミの日、燃えるゴミの日、みたいな感じで、「スニーカーゴミの日」というのある地域とやってみたことがあるんです。やはりパッケージを作って、中にスニーカーを入れるためのゴミ袋を入れて。でもこの試みは成功しなかったそうなんです。「スニーカーゴミの日」作れるほど、スニーカーのゴミの数は多くなかったみたいで。

ハセベ
でもこのパッケージ最高じゃないですか。表のコピーが「do you believe in REINCARNATION」でしょ。あけると、力強く「We DO!」と書いてある。このセンスは素晴らしいですよ。

水上
ありがとうございます。今、実際に行っているシステムは、ベルマークに似てるんですが、学校やコミュニティを単位にして古いスニーカーを集めてもらい、5000足に達したらナイキがトラックを出して引き取りに行く、というやり方です。で、5000足集めて引き取ったコミュニティには、コート寄贈の優先権が与えられるんです。すぐに寄贈というわけにはいかないのですが、インセンティヴとしては意味があると思います。

ハセベ
とにかくナイキは企業全体として、できることをただやるんじゃなく実にスマートにやってのけていますよね。

水上
スポーツを通して生活を向上させる、というのは、ナイキの企業としてのアイデンティティと、社会貢献とはすごくわかりやすく通じ合うのでラッキーな面はあります。普段の仕事と近いところで社会貢献をすることができますから。リユーズだけでなく、コートを作って、そこにスター選手を呼んで、ということも社会貢献につながります。

ハセベ
アスリートにとっても、社会参加の機会が与えられるとても有意義なプログラムになりますよね。いやー、やっぱりナイキはいいなあ。ぼくたちも負けずにかっこいい活動を作り上げるぞ。

●水上 陽子(みずかみ・ようこ)
(株)ナイキ・ジャパン PRマネージャー
コンピューターメーカーの広報宣伝を経て、(株)ナイキジャパンに1997年入社。以来、PRチームに所属しさまざまなスポーツカテゴリーのPR活動を担当。2003年からはナイキジャパンとしての社会貢献をスタート。

●ハセベ ケン
渋谷区議会議員/ NPO法人green bird代表
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属(統一会派:未来の渋谷をつくる会)。 ハセベケン事務所ホームページ: http://www.hasebeken.net/

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