(『ソトコト』 2004年8月号掲載)
シブヤの未来を考えるプロジェクトチームで、ハセベや本誌編集長などとともに知恵を絞っている、日本総研の嵯峨生馬さん。ソトコトでもすでにおなじみのアースデイマネーの仕掛け人。さてシブヤの未来、地域通貨の未来をどうするか。リラックスしながらも真剣なトークがgreen birdの事務所でくりひろげられた。

ハセベ:
嵯峨さんには、いま区長直轄のプロジェクトチームのシブヤミライプロジェクト委員会というのに入ってもらっていて、その中で地域通貨を取り上げていただいてます。

嵯峨:
アースデイマネーをはじめたのは2001年の10月。その前後に今の区長である桑原さんから電話がかかってきて、ちょっと話を聞かせてくれといわれたんですよ。当時は助役さんで、お会いする前はドキドキしたんですけど、これがよく理解いただけた。そして、ぼくたちが行政とは距離をおくかたちではじめた地域通貨というものを今や区が検討しているというのは隔世の感がありますね。渋谷区議会でハセベさんの質問に答えて桑原区長が「地域通貨は避けては通れない課題」とおっしゃったのにはびっくりしました。実際、区長自身明確なビジョンをおもちで、ボランティアについてよく考えていらっしゃいます。曰く、ボランティアにあまねくポイントがつくようにしたいと。


ハセベ:
でも区でやるとなるといろいろな人がいらっしゃいますよね。商店街の人とか、いろんな人の合意が必要です。その人たちの満足を得ようとすると商品券のようなものでもある必要性が出てくる。

嵯峨:
両方成り立つようなものにしなくてはならないということですよね。アースデイマネーは趣旨に賛同する人が参加するというものですが、渋谷区でやるとしたらバランスがとれたものにしないといけない。ボランティアを推進していきながら商店街も活性化していく。これをどうやったら実現できるか。


ハセベ:
ボランティアの活性化と街の活性化を行政と組むかたちでうまく実現していく。うまく併用できるモデルを作り上げるのが当面のゴールだと思いますね。それが多分都市型の、「渋谷型」と語り継がれるモデルになればいいなと思ってるんですが。

嵯峨:
そもそも地域通貨の一番難しいところは入口と出口のミスマッチです。入口はゴミ拾いなどのボランティア、社会貢献ですが、ここではなるべくたくさん通貨を発行したい。今日は地域通貨100人分しか用意してなかったところに120人集まっちゃったからって残りの20人にはゴメンねなんていうのは嫌じゃないですか。発行についてはある意味自由にもらえるもの、フリーマネーであってほしい。でもそれをたとえば商店街に持っていって自由に使えるかというとどうなんだろうという意見が当然出てくる。出口の議論ではいつも損得という考えが出てしまう。


ハセベ:
そうなんですよね。損得じゃないんだけど、損が出ては困る。アースデイマネーみたいなものだと損して得取れと最初から言ってしまっているけれど、区がやるものではそれは簡単には言えない。要するにいいことをしたらちょっともらえる。そのちょっとがどんなインセンティヴなのか、というところが大切で、それをうまく作れたら面白いものになるんじゃないかと。2年後くらいからほんとうに回りだすといいですよね。

嵯峨:
税金ていうのは、行動に対して引かれるものですよね。何か買うと引かれてそれがいろいろなことに使われる。でも地域通貨は逆で、足される。福祉とかやるとなんらかのかたちでプラスになる。そのことの面白さですよね。単純化して言っちゃうとラジオ体操のスタンプカード。それが回る、使えるということでは?



写真のカフェgabowl(TEL:03-3499-6077)をはじめ現在、渋谷を中心に約30店の「r」を使えるお店がある。
アースデイマネーについての詳細は
http://www.earthdaymoney.org/


嵯峨さんもプロジェクトに携わっている渋谷生まれの地域通過、アースデイマネー「r」。寄付をしたりその活動に参加することで貢献することが出来、貢献した証として「r」が発行されるという仕組みだ。例えば、ゴミ清掃の活動に1時間参加したら500r、活動費を1000円カンパしたら1000rもらえるというように。「よいことをした人」にだけ、そのつど発行されるおカネということだ。

ハセベ:
今後どういうかたちで広がっていくでしょうね? 郊外型と都市型のモデルで違ってくると思うんですよ。郊外型のほうが広がりがあるよね、今のところ。

嵯峨:
郊外には農地や森などもあり、楽しめますから。それに比べて都市はやはり資源が限られているというか。人はいますけどね。まさにお金によって動いていますからなかなか難しいところがあります。だから都会で成功させるには仕組み的なところで面白みを作らないと。でも今、いろいろなところで新しい仕組みが作られています。それを真似するのもいいわけです。たとえば来年くらいから千葉県の市川市で始まるんですけど、住民税の1パーセントを指定するNPOに寄付できるというシステム。


ハセベ:
それはいいですねえ。僕は自分の払っている10パーセントは自分の指定どおりに使っていいということの導入も面白いと思ってるんです。たとえばハセベの税金の10パーセントは福祉に使ってくれ、というようなかたちで。そういうことがいえたら、関心を持たれると思うんですよね。

嵯峨:
そんなことになったら面白いですね。渋谷も負けていられませんね。地域通貨は今までとは違うお金の流れを作り出しますよ!




 実質的なお金、温かみのあるお金、感情のこもったお金。資本主義社会が忘れてしまった、ほんとうのお金。地域通貨の仕組みは、着実に、テイラーメードで、さまざまな場所で進んでいる。さて渋谷型モデルの登場を楽しみにして待とう。

●嵯峨 生馬(さが いくま)
株式会社日本総合研究所創発戦略センター研究員。特定非営利活動法人 アースデイマネー・アソシエーション 代表理事。1974年生まれ。1998年 東京大学教養学部第三(相関社会科学)卒業。1998年日本総合研究所入社。2001年 アースデイマネーの設立にかかわり、03年10月から代表理事。専門は、地域通貨、ポイントプログラム、NPO、まちづくり等。現在、渋谷区「シブヤミライプロジェクト委員会」委員をつとめる。
著書に『地域通貨』(NHK生活人新書、2004年3月刊)。
「地域通貨フォーラム」: http://www.ccforum.jp/
「アースデイマネー」: http://www.earthdaymoney.org/
●ハセベ ケン
渋谷区議会議員/ NPO法人green bird代表
1972年3月東京都渋谷区神宮前に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを2003年1月に設立。原宿・表参道を中心にゴミのポイ捨てに関するプロモーション活動を開始する。2003年4月に渋谷区議に当選。現在、渋谷区議会議員・無所属(統一会派:未来の渋谷をつくる会)。 ハセベケン事務所ホームページ: http://www.hasebeken.net/
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